• LOX-index® とは?
  • 酸化変性LDL(LAB)とは?
  • LOX-1とは?

脳梗塞・心血管障害の発症リスクを評価

「LOX-index®は、脳梗塞・心筋梗塞発症リスクを評価する最新の指標です。日本国内で行われた、約2,500名を約11年追跡した研究成果がベースになっております。

この研究から、sLOX-1(可溶性LOX-1:血中に放出されたLOX-1)とLAB(LOX-1 ligand containing ApoB)から得られる解析値が、今後10年以内の脳梗塞・心筋梗塞発症率に大きく関与する事がわかりました。

脳梗塞発症率で約3倍、心血管疾患発症率で約2倍となり、これら2つの疾患の発症リスク評価検査としては、唯一の検査です。

LOX-index®と動脈硬化のメカニズムとは?

動脈硬化は、血管内皮細胞の機能障害が出発点だと言われています。LOX-1は血管内皮細胞に存在する変性LDLのレセプターです。LOX-1と変性LDLが結合すると血管内皮細胞に慢性的な炎症状態が生じ、これが動脈硬化の原因であることが分かりました。

動脈硬化の状態から脳梗塞・心筋梗塞の発症までを幅広くフォロー

LOX-index®は動脈硬化の初期段階を反映しています。その為、今までの血液検査や画像健診で捉えきれなかった血管の状態を知ることが可能です。動脈硬化に起因する疾患は、発症までこれといった症状が出ない事が予防及び治療を遅らせる原因となっていましたが、LOX-index®は、動脈硬化の状態を数値化し、発症リスクの予測をすることで予防への意識づけにご活用いただけます。

LDLと比較した際のLOX-index®の有用性

動脈硬化のリスクマーカーとして、これまでLDLコレステロールが一般的でしたが、心疾患と相関性がある事は知られているものの、脳血管障害との相関性は得られておりません。また、心疾患患者の約3割はLDLコレステロールが基準値以下で発症しているとの報告もございます。

LDL値と心筋梗塞発症者数の相関性(吹田研究より)

動脈硬化の原因は酸化変性したLDL?

悪玉コレステロール(LDL)は動脈硬化の直接の原因ではない?

コレステロールとは三大栄養素(糖質・タンパク質・脂質)のひとつである脂質の仲間で、細胞増殖やホルモン合成など体にとっても重要な働きをしています。コレステロールは肝臓で生成され、血液に乗って身体中を移動します。しかし、コレステロールは、脂なので水に溶けることができません。

そのためアポたんぱくという物質と結合し血液中を移動します。その結合した状態を「リポたんぱく」と呼びます。「リポたんぱく」はカイロミクロン、VLDL、IDL、LDL、HDLと、その分子量(サイズ)によって5種類に分類されており、LDLは悪玉、HDLは善玉と表現されたりします。

しかし、両方ともリポたんぱくとしては同じ物質であり、LDLは肝臓で生成された栄養を各細胞へ届けたり、HDLは細胞中の不要な栄養を回収したりと両方とも体にとっては重要な働きをしております。

実際に、LDLが少ない場合でも脳梗塞や心筋梗塞を発症している症例も多く報告されており、近年の研究ではLDLの量よりも質が原因ではないかと考えられています。

LDLの質の劣化は”活性酸素”が原因?

では、何が問題なのか?近年の研究では「活性酸素」という概念が注目されています。ヒトが生きていく上で酸素は必須の物質です。私たちは呼吸によって日々、大量の酸素を体内に取り入れていますが、そのうちの約2%程度は「活性酸素」になるといわれています。
活性酸素はほかの物質を酸化させる力が強い酸素の形態であり、殺菌力が強く、細菌やウイルスの撃退といった重要な役目も果たしていると考えられています。

しかし、過剰になりすぎると正常な細胞や遺伝子も酸化させることがあり危険であると考えられています。また、活性酸素の増加は動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病といった様々な疾患の発症にも関与していると考えられております。

真の悪玉?超悪玉コレステロール酸化変性LDL(LAB)

LDLも体内で活性酸素によって修飾されます。それが酸化変性LDL(通称LAB:LOX-1 ligand containing apoB)です。
LABは血管内皮に存在するLOX-1という分子と結合し動脈硬化を促進させる性質があります。別名、超悪玉コレステロール、変性LDL、酸化LDLなどとも呼ばれます。
LABは喫煙や不規則な食生活や慢性炎症などの影響で活性酸素が体内で増加する、もしくはカラダが本来が持っている酸化への抵抗力(抗酸化力)が下がることで増加していくと考えられています。

酸化変性LDL(LAB)と動脈硬化のリスク因子の関係性

喫煙は動脈硬化のリスク因子であり、酸化変性LDL(LAB)の増加にもつながります。喫煙は体内の活性酸素を高めます。実際に、非喫煙者に比べて多量喫煙者(20本以上/日)では酸化変性LDL(LAB)が高くなる傾向があることが示されております。(*1)なお、禁煙の効果としてLOX-indexが低下したとする研究報告も発表されております。(*2)
メタボリックシンドロームは動脈硬化性疾患のリスクであり酸化変性LDL(LAB)の増加にもつながります。内臓脂肪の蓄積に伴い、耐糖能異常や脂質異常症、高血圧などが集積し、脂肪組織からは種々の炎症系サイトカイン(TNF-α,IL-6)や活性酸素が発生します。実際に、メタボリックシンドロームの診断基準を満たす方では酸化変性LDL(LAB)が高くなることが報告されています。(*1)
暴飲暴食は動脈硬化のリスクとなります。一方で、抗酸化作用のある栄養素は活性酸素の発生を抑え、酸化変性LDL(LAB)の改善にも効果があると考えられています。 【ビタミンC】キウイやイチゴ、トマト【アスタキサンチン】エビやカニ 【ビタミンE】ナッツ類、大豆【ポリフェノール】リンゴ、赤ワイン(*3)【コエンザイムQ10】かつお、さば、いわし、ほうれん草

LAB他の検査項目

酸化変性LDL(LAB)と様々な変性脂質

脂質はLDLやHDL以外にもその形状や修飾のされ方により、様々な名称で呼ばれます。LOX-index®検査ではそういった数あるリポたんぱくの内、 LOX-1と結合する性質を持ち、ApoB抗体へ反応をする化学的修飾を受け物質をLABとして測定しています。(*3)


SdLDL
sdLDL(スモールデンスLDL)はその名の通り、粒子径が小さく比重の重いLDLの別称です。正常なサイズのLDLよりも血管の中を長く漂う性質を持ち酸化されやすいと考えられています。sdLDLの内、酸化修飾を受けたものはLABへと変化します。

MDA-LDL
MDA-LDL(マロンジアルデヒド化LDL)は酸化LDLの一つです。高脂血症や糖尿病で高値を示すことが知られており、冠動脈疾患の再発リスクの予測因子として有用性が証明されています。

変性HDL
善玉コレステロールと呼ばれるHDLも、修飾を受けると血管内皮に機能障害をもたらします。特に冠動脈疾患の患者では本来HDL中に多く存在する抗酸化酵素(PON1)の活性が低く変性しやすいと考えられています。(*5)変性したHDLはLOX-1に結合する性質を有します。※ApoBを含まないためLABの測定法では認識されません。

RLP-c
RLP-C(レムナントリポ蛋白コレステロール)は、血液中のリポたんぱくが分解され生じる生成物です。健常者では速やかに代謝され血中にはほとんど存在しませんが、代謝に異常があると増加します。動脈硬化の危険因子とされており、LOX-1にも結合する性質を有しています(*4)
  • K Uchida .et al.:Associations of atherosclerotic risk factors with oxidized low-density lipoprotein evaluated by LOX-1 ligand activity in healthy men. Clinical Chimica Acta 412 1643-1647 2011.
  • MKomiyama. et al.: Smoking cessation reduces the lectin-like low-density lipoprotein receptor index, an independent cardiovascular risk marker of vascular inflammation. Heart Vessels,21 July 2017.
  • T Samamura .et al.:LOX-1 in atherosclerotic disease. Clinica Chimica Acta. 440:157-163. 2015
  • Shin, H.K. et al.: Remnant lipoprotein particles induce apoptosis in endothelial cells by NAD(P)H oxidase-mediated production of superoxide and cytokines via lectin-like oxidized low-density lipoprotein receptor-1 activation: prevention by cilostazol. Circulation. 109:1022-8, 2004
  • Besler C et al.: Mechanisms underlying adverse effects of HDL on eNOS-activating pathways in patients with coronary artery disease. J Clin Invest. 121:2693-708, 2011

LOX-1とは?

LOX-1は酸化変性LDL(LAB)と結合し動脈硬化を促進します

LOX-1(Lectin-like oxidized LDL receptor-1)は血管の内皮細胞に存在するタンパク質です。発見当初は酸化LDLのスカベンジャー受容体として酸化LDLを認識して取り込む機能が注目されておりましたが、(*1)現在は炎症性マーカーとして研究も進んでおり、動脈硬化の促進因子として注目されております。LOX-index®検査では細胞表面上からプロテアーゼにより切り離され、血中に存在している可溶性のLOX-1(sLOX-1)を測定しております。

LOX-1はAT1を活性化し、血管障害を引き起こします

また、LOX-1は血管を収縮させたり、塩分を貯留させたりすることで高血圧を促進するホルモン「アンジオテンシンII」とも密接な関わりがあることが分かっております。(*2)酸化LDLとLOX-1が結合するとLOX-1と隣接して細胞膜に存在するAT1(アンジオテンシンⅡ受容体)が活性化します。AT1活性により血管障害が促進します。

LOX-1と動脈硬化のリスク因子の関係性

喫煙は血管の炎症を引き起こし、LOX-1の増加にもつながります。実際に、血中sLOX-1濃度が一日あたりの喫煙本数、呼気中の一酸化炭素(CO)濃度 といった指標と相関することを示した報告がございます。(*3)また、禁煙の効果としてLOX-indexも低下したとする研究も報告されております。(*4)
肥満は動脈硬化のリスク因子と考えられおり、LOX-1の増加にもつながります。実際に、BMI25以上の肥満群では血中sLOX-1濃度が高値を示すことが報告されております。(*5)また、カロリー制限や有酸素運動などの体重減少介入を行うことによってsLOX-1濃度が低下することも報告されております。(*6)
糖尿病は、血液中を流れるブドウ糖(血糖)が増える疾患であり、LOX-1の増加にも密接な関わりがございます。血中のブドウ糖とタンパク質が結びつき、熱せられることで産生されるAGEがLOX-1の増加をもたらすこと、Ⅱ型糖尿病患者では血中sLOX-1濃度が上昇することが報告されています。また、血糖をコントロールすることによりsLOX-1の濃度にも改善がみられることが報告されております。(*7)

LOX-1と他の検査項目

CRPとLOX-1について

CRP (C-reactive protein)は、体内で炎症や組織細胞の破壊が起こると上昇するたんぱく質です。現在は、より高感度系となったCRPなども検査として普及しております。LOX-1とCRPについては、LOX-1がCRPの受容体としても機能し、結合することで血管透過性の亢進を引き起こす作用があることが報告されています。 (*8)また、喫煙群など血管の炎症が進行している群ではsLOX-1と高感度CRPは正の相関があることが報告されております。(r= 0.232, p<0.005)(*3)

BNPとsLOX-1について

BNPは心室から分泌されるホルモンであり、心臓の元気度を表す指標とされております。心室に負荷がかかることで発生し、心筋が他の臓器に危険を知らせるための物質と考えられています。検査としては、以前はBNPが広く用いられていましたが、近年では心不全の重症度を鋭敏に反映することが出来るNT-proBNPも用いられます。
LOX-1とNT-proBNPについては、直接の相関関係などは認められていませんが両マーカーとも心不全群では優位に高くなること、心室駆出率(心臓のポンプの働きを表す指標)とも負の相関があることが報告されております。(*9)

  • T Sawamura.et al. :An endothelial receptor for oxidized low-density lipoprotein. Nature 386, 73-77, 1997.
  • Yamamoto K.et al. :Oxidized LDL (oxLDL) activates the angiotensin II type 1 receptor by binding to the lectin-like oxLDL receptor. FASEB J fj.15-271627; published ahead of print April 15, 2015,
  • Rieko Takanabe-Mori.et al. Lectin-Like Oxidized Low-Density Lipoprotein Receptor-1 Plays an Important Role in Vascular Inflammation in Current Smokers;Journal of Atherosclerosis and Thrombosis Vol. 20 No. 6 p. 585-590 2013.
  • M Komiyama. et al.: Smoking cessation reduces the lectin-like low-density lipoprotein receptor index, an independent cardiovascular risk marker of vascular inflammation. Heart Vessels,21 July 2017.
  • Yasuhiro Nomata.et al.: Weight reduction can decrease circulating soluble lectin-like oxidized low-density lipoprotein receptor–1 levels in overweight middle-aged men; Metabolism. Sep;58(9):1209-14. 2009.
  • T E Brinkley.et al.: Caloric restriction, aerobic exercise training and soluble lectin-like oxidized LDL receptor-1 levels in overweight and obese post-menopausal women;Int J Obes (Lond). June ; 35(6): 793–799. 2011.
  • Kathryn C. B. Tan.et al.:Soluble lectin-like oxidized low density lipoprotein receptor-1 in type 2 diabetes mellitus.; J Lipid Res. Jul;49(7):1438-44. 2008.
  • Fujita, Y. et al.: Lectin-like Oxidized LDL Receptor 1 Is Involved in CRP-Mediated Complement Activation,Clin Chem 2011
  • Feyzullah Besli.et al.:The relationship between serum lectin-like oxidized LDL receptor-1 levels and systolic heart failure. Journal Acta Cardiologica Volume 71, Issue 2, 2016 .